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【特集】ファンダメンタルズに大きな変化はなく、ドル円相場は再び下落基調へ
cms.tatsujin05 (2012年7月28日 14:45)

ドル円はふたたび80円割れに。レンジが一段下がった感があるドル円。再び下落基調が続くのか?トレンド転換だとすれば、その理由は何か?

年初は予想外のリスク・オン

2011年末、多くの市場関係者は2012年前半の世界景気に対してやや弱気だった。しかし実際には、2012年に入ると世界の主要株価指数は上昇を続けた。2011年12月と2012年2月の2回行われたECBによる3年物資金供給オペを受けて、欧州周辺国の財政問題が一旦小康状態に入った事などが市場のセンチメントを好転させたと考えられる。

2008年12月にFRB(米連邦準備理事会)がゼロ金利政策を導入して以降、このように市場参加者のリスクテイク嗜好が強い、いわゆるリスク・オンの環境となると、円と米ドルはともに弱くなるものの、円よりも米ドルの方が弱くなり、ドル円相場が米ドル安・円高方向に下落する傾向が強くなっている。しかし、2012年入り後、3月中旬までの動きを見ると、円か最も弱い通貨となり、米ドルが2番目に弱い通貨となっている。この結果、米ドル円相場は1月の76円台から84円台まで10%程度上昇したのである。

ドル円相場上昇の理由

このように円か通常以上に弱くなったのは、2月14日に日銀が資産買入などの基金を55兆円から65兆円に拡大し、長期国債の購入枠を10兆円拡大すると発表したことが大きく影響している。海外勢を中心に、日銀の金融政策がより積極的になったと見る向きが多くなり、積極的な円売りに動いたのである。

これに加えて、本年1月のFOMCの声明文で『超低金利が正当化される期間』が2013年半ばから2014年後半に変更されたことを受け積み上がっていた債券のロング・ポジションが、その後予想を上回る米景気指標の発表が続いたこともあって売り戻され、米長期金利か上昇、米ドルがそれに連れて強含んだことも米ドル円相場の上昇の背景となった。

ドル円相場の基調は変わらず

84円台までの米ドル円相場の上昇は私にとって完全に予想外であったが、リーマンショック以降の米ドル円相場の下落トレントの背景にあるファンダメンタルズは大きく変化しておらず、2012年も春恒例の円安が終了した後、米ドル円相場は再び下落トレントを再開し80円を割り込むと予想する。 まず、日銀に対する期待は早晩失望させられるであろう。

そもそもゼロ金利下で、日銀がバランスシートを膨らませることに直接の円安効果は無い。余剰資金が金融機関の当座預金に無駄に積み上げられていくだけである。従って、これに よる円安を期待して造成された円ショート・ポジションは結局巻き戻しを余儀なくされる。

円ショート・ポジションは非常に大きくなっていると考えられ、巻き戻しに伴う円買い圧力も強いであろう。また、米国の金利も結局は低下するであろう。米国は来年、減税終了と歳出削減で財政からの景気下押し圧力が非常に大きい。財政からの強烈な引き締め圧力がかかる中で、金融政策が引き締められる可能性は非常に低い。欧州情勢も基本的には何も変わっていない。

今後、再びイタリアやスペインの対独スプレッドが拡大する可能性は十分考えられる。 ちなみに過去2年間、4月~5月頃に欧州周辺国に対する懸念が高まり始め、世界の投資家のリスク回避志向が強まり、年末に向けて円か買われるということが繰り返されている。今年は違うといえるだけの材料が見当たらない。 本邦投資家による対外債券投資増加や、貿易収支の赤字化による円安を期待する声もある。

もっとも、筆者はこの円安圧力もさほど期待できないと考えている。本邦投資家が対外債券投資を活発化させ、2005~2007年の頃のように円キャリー・トレードが活発化するには金利差が小さ過ぎる。円キャリー・トレードが魅力的になるには、金利差をボラティリティで割ったリスク調整後リターンが上昇する必要があるが、足もとの米ドル円相場のリスク調整後リターンは2005~2007年の頃の水準の5分の1程度しかない。

また、日本の貿易収支の小幅赤字傾向が続いたとしても、毎月1兆円程度にも上る所得収支の黒字に伴う円買いで貿易赤字から発生する円売りは吸収されてしまう。確かに経常黒字は減少するであろう。

しかし、国際収支から発生するフローがネットで円売りになるためには、投資収支から発生する円売りが縮小傾向にある経常黒字から発生する円買いを上回る必要がある。しかし、前述のように、日本と主要国の間の金利差がさほど大きく無い中、投資収支から大きな円売りが発生するのを期待するのはやや困難であると考えられる。

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